姫路城 [5/11] 大天守三階で東大柱・西大柱を間近に見る。

姫路城訪問記其の五。

[前回までの訪問記概要]
標準見学ルートで菱の門から「いろはにほ」門を通り、水曲輪から大天守へ。二階の巨大な出格子窓をじっくりと見た。その５では３階から５階まで、３階では東西大柱（心柱）を間近で見ます。

訪問時期：2019年/2020年
姫路城訪問記 − 其の一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一。
姫路城訪問記もくじ。

＜訪問記＞

大天守三階へ。二階までとは大きく雰囲気が異なり、外周部の武者走りと大広間一つとなる。このフロアは大天守を支える東大柱・西大柱が間近に見られることが特徴となっている。
大天守三階説明板。東西の大柱だけでなく、内室と武者隠しもある。
大広間の中央に文字通り「そびえ立つ」東大柱。地階あたりではまだ四角い角材だった大柱は、三階では丸く加工されている。東大柱は昭和の大修理の際に腐った部分（根元から5.4m）を台湾檜で根継ぎし取り替えられたが、この３階部分で見られる柱は慶長期に池田輝政が築いた姫路城当時のものが使われている。
西大柱。こちらは角材となっている。記録によると昭和35年の昭和の大修理で西大柱は丸々取り替えられている。旧材（池田輝政築城時のもの）は現在は三の丸広場の一角で展示されている。東大柱が丸く加工されていることに対し西大柱が四角い理由は不明。昭和の大修理の際の旧材の写真を見ると比較的丸くなっていたような感じなので、取り替えの際に四角くされたと思われる。西大柱は三階で上下２本に継がれていると資料にあり、おそらく中央部の木材の色目が少し変わっているところが継ぎ目だろうか。
大天守三階南東端から。かなり広い大広間の真ん中に東大柱がそびえ立っている、なかなか斬新なデザイン。
説明板にあった「内室」（うちむろ）。三階は窓の位置が床から高く、そこにアクセスするために石打棚という中二階のようなスペースが設けられている。その下のスペースを壁を作って部屋のようにしたのが「内室」とのこと。もちろん、三階まで攻めてきた敵兵が居たら、中二階の格子窓から狙い撃ちもできる。
三階の階段。天井が高いからか、踊り場を経由して折り返して四階へ上がる。
三階から四階へ向かう途中の踊り場へ。ここにも多数の武具を掛ける場所があった。
踊り場から三階を見下ろす。踊り場に火縄銃を多数配置しておけば、三階に上がってきた敵をここから狙い撃ちできる。天守まで攻め込まれている時点で落城寸前だが、少しでも最上階の城主へ辿り着くのを遅らせる時間稼ぎが出来る構造がふんだんに盛り込まれている。
こちらは先ほど説明した、三階の北側・中二階部分。三階は東西面に巨大な大千鳥破風があり、その関係で南北面は窓の位置が高く、窓にアクセスするために「石打棚」と呼ばれる一段高い廊下のような空間が作られている。
では大天守四階へ。こちらも三階と構造は似ていて、広い空間に東大柱と西大柱だけが存在感を持って立っている。三階より一回り狭くなり、外周部の武者走りは無い。
大天守四階説明板。
四階の南北面には左右に千鳥破風が２つ設置されている。その関係で破風と破風の間の部分は窓が高くなり、そこにアクセスするために石打棚と呼ばれる一段高い通路が設置されている。
千鳥破風の内部、破風の間。なお四階は南北には千鳥破風が２つ、東西は三階にあった巨大な大千鳥破風（と説明板では書かれているが、大入母屋破風だと思う）の上部が四階の中央に迫り出しているので、窓はそれを避けるように少し上部に位置しており、四面ともに石打棚が設置されている。
千鳥破風の格子窓から覗いた南側の様子。巨大な緑のスペースは三の丸広場。その向こうには駅までまっすぐ伸びる大手前通りが見える。THE姫路、という光景。
石打棚の下に見える小さな扉は、この向こうにある巨大な大破風の内部に造られた内室へアクセスするためのもの。
大天守四階全景。階段は中央に二つ設置されているが、奥のものは観光用に上下ルートを別にするために増設されたもの。手前がオリジナル。
では、五階へ上がろう。
大天守五階へやってきた。だいぶ狭くなってきた。天井も低い。五階は外部から見ると4層目と5層目の間の部分に位置するため、窓も少なく、天井が低く薄い層になっている。
大天守五階説明板。東大柱の説明では、建物の重みで中心から東南方向に37cmも曲がっていて、大天守の建物そのものも傾いていた。傾きや曲がりは昭和の大修理で大天守を解体しコンクリートの基礎に改修するなどして解決した。また東西の大柱はこのフロアの天井までで、接続部分に昭和の大修理で鉄板による補強がされている。
五階は南北に千鳥破風がある。その破風の間から下をのぞいてみよう。
南の破風の間の格子窓から見た備前丸の様子。すぐ上に屋根があることから、千鳥破風の下側の屋根の下についている小窓から覗いているようだ。
五階の南北の千鳥破風の棟木（むなぎ・破風の頂点の横木）の裏側には、どの資材をどこで使うかを示した「刻み番付」（または化粧番付）が残る。明かりがほとんど無くほぼ真っ暗な中なので現地では肉眼でほとんど見えないが、ライトで照らしたり写真を撮ると分かる。「六中め南側ちどりむね」と読むと思う（たぶん）。公式ガイドによると化粧板付を付けるのは慶長期の流行りだとか。
今度は北側の千鳥破風内部、破風の間へ。
北側の窓から外を見る。ここも破風の下の屋根の下にある小窓のようだ。屋根が迫り出しているので下しか見えず、東小天守が見える。屋根に登ってきた敵を狙う用？
北側の千鳥破風内部に残る、刻み番付（化粧番付）。「六中め北側ちどりむね」と読むと思う。5文字目は「側」ではなく「通」かも？
写真では刻み番付をアップで撮っているが、実際にはこんな感じ。千鳥破風の棟木（一番上の横木）なので、遠いし、光が全く入らないので真っ暗。
一方、東西面は唐破風になっている。西の唐破風から覗いた図。眼下に三階・四階を貫いていた大千鳥破風の先端と、乾小天守が見える。
五階の西大柱。ここが西大柱の先端部になり、天井の梁との接続部分が鉄板で補強されている。
五階全景。天井が低く、四方の中央に窓が2つずつあるだけなので、非常に薄暗い。外からはその存在が分かりづらい、秘密のフロア。