姫路城 特別公開イベント2022.3 訪問記 其の二。
[前回までの訪問記 概要]
2022年春の姫路城特別公開イベント、本丸東側の「トの櫓」および搦手周辺へ。まずは初公開となるトの櫓内部を見学。土間で菱形で傾いているという特殊な櫓をじっくり見る。其の二では「との一門」から搦手方面へ向かいます。
訪問時期:2022年3月
姫路城 特別公開2022.3 訪問記 − 其の一、二、三。
<訪問記>
トの櫓の格子窓から見下ろした、との二門と搦手道。との二門前後一帯に加えて、床板のおかげで石垣に張り付いている敵まで丸見えです。必見ポイント。 トの櫓から井郭櫓方面を見ると、下り坂で下がっていく搦手道沿いに、かなり高い石垣が積み上げられ、其の上に搦手口を見下ろすかのように井郭櫓がそびえたてられているのが分かります。そして搦手道を狙いまくれる狭間が多数配置されています。 トの櫓 南側の端っこに小さく設置されていた格子窓から覗くと、搦手道に加えて、との一門を突破した敵が入ってきた巨大枡形内の敵も狙い撃ちできます。尤もその前に、正面右側の「折廻櫓」の無数の狭間から集中砲火を浴びせられそうです。 トの櫓 入口付近から、折廻櫓と大天守を見上げてみます。普段見慣れない姫路城の新しい表情が楽しめます。 トの櫓の側面はかなり分厚く漆喰が塗ってあるようで、石垣の上に丸く塗り込められたような変わった形状をしていました。床板がなく、土間なこともこういう構造になった理由の一つでしょうか。ここも忘れずに見たいポイントです。 巨大枡形から見た「折廻櫓」を正面から。鉄格子の厳しい防備を誇る窓と、その下に無数の狭間を備えた、「との一門」を超えて来た敵に対する徹底的な攻撃力を持つ櫓です。 大天守を見上げると、隅だけでなく中央部の唐破風屋根の格子窓の下にもしっかり石落としが設置されていて、大天守下はどこに張り付いても上から攻撃されるようになっています。 との一門を越えて来た敵が、右に行くのか左に行くのか、あっと思った瞬間に折廻櫓の正面に出てしまうと、あっという間に集中砲火を浴びること必至だな、と感じる構図です。 大天守の石垣 北東端の様子。下8段ほどが黒く、その上は黄色くなっています。昭和の大修理では大天守は解体修理されますが、その際に天守台の石垣も随分積み直しがされたと記録されています。おそらくその時の積み直し石垣と積み直さなかった石垣の差でしょうか。ちなみに天守台石垣の南東の隅石上部には、修理の記録が彫られた石が埋め込まれていて、備前丸からも見えます(文字を読むには双眼鏡などがいるかも)。 今回は入れない、大天守の裏側へと回り込める「への門」。土塀が真っ黒なのでまだここは修理されておらず、そのため公開対象外になったのかもしれません。 「への門」へ続く石段スロープの脇には、排水のための石樋が残ります。入れないので近寄れませんが、ズームで見てみましょう。 「への門」すぐのスロープに残る石樋。そこから落ちる水を受ける場所には瓦が縦に敷き詰められています。右側には矢穴が残る石も見えます。 「との一門」から見上げた大天守。搦手口から攻め上がってきた敵兵が最初に見る景色です。 では「との一門」へ。こちらは内側、柱や長押、壁板がむき出しの質素な門といった印象です。 との一門に設置されていた「搦手周辺」の解説パネルです。との一門の内側にあった大天守とトの櫓に囲まれた曲輪は、への門へと続くルートあるものの枡形の様相をしており、との一門の前後で二重枡形となっているとあります。右側の図が非常に詳細でとても参考になります。 「との一門」説明パネルです。場内で漆喰が塗っていない唯一の素木造りの城門とのことで、門自体の構造や扉、金物などすべてが古いタイプで、秀吉の播磨平定後に廃城処分とした赤松氏の「置塩城」から、その後築城する姫路城(秀吉/官兵衛の旧姫路城)に建物や石垣は移されたと記録に残ることから、この「との一門」はその置塩城から移築されたものと考えられているそうです。 との一門の門扉は、上半分が格子で、下半分が鉄板張りの板戸という、古いタイプの木戸が採用されています。 との一門を出た先には、との二門との間に見事な桝形が形成されています。正面および左側の土塀(との一門東方土塀)も現存です。狭間が埋もれないように、穴の内側には板が張ってあるのが分かります。 枡形内部から、との一門を見上げた定番の構図です。かっこいい!! そして見た目だけでなく、正面の「との一門」二階、左側の「トの櫓」、右側の「ヘの渡櫓」の3方向から集中攻撃を浴びせられる強さを誇っています。 との一門は、内側(大天守側)から見るとシンプルでしたが、外側(搦手側)から見ると突き上げ戸の奥に格子窓があり無骨だけど堅固な印象を受けます。 「との一門」二階に残る、格子窓と突き上げ戸。 「との一門」にはもう1つ特徴的な機能があります。勝手口の横に三角形の板が埋め込まれています。これは訪問者が門内側の城兵に来城を伝える「呼び鈴」ならぬ「呼び板」で、実際に叩いてみるとコンコンと良い音が響き渡りました。よく見ると三角形の辺に沿って切り込みが入っています。作成時は大きく柱をくり抜いて、内側にこの異なる木材で小さな三角形の板を作って嵌め込み、再度蓋をしたのでしょう。 ちなみに向かって右側にも同じ構造がありますが、こちらには勝手口はありません。 との一門の本柱の根部は、ギザギザに継がれた跡が残っていました。下のほうがやや新しそうな印象なので、根本が腐ったので切り取って補強した跡でしょうか。 そして「との一門」から搦手口へ向かう石段の一段目には、瓦を縦に並べた場所があります。雨の日は石段はよく滑るので、一歩目に滑らないようにこういう滑り止め構造にしたのでしょうか?
>> 姫路城特別公開202203 [3/3] へ続く。<<
訪問時期:2022年3月
撮影機器:FUJIFILM X-T20 + XF10-24mm