多羅尾陣屋 : 神君伊賀越えの道中警護で出世した多羅尾氏の陣屋跡。

多羅尾陣屋 (たらおじんや) は京都・滋賀・三重の県境に位置する信楽地域の最奥地に江戸時代 存在した代官屋敷で、かつてここは京都から伊賀へ抜ける「京街道」など主要道が通る要衝の地だった。多羅尾氏は元は甲賀武士で、本能寺の変の直後に発生した徳川家康の逃走劇「神君伊賀越え」の道中を警護した功績から、徳川幕府成立後に信楽4000石の領地を与えられた。慶長期から明治まで260年間 幕府直轄領を管理する信楽代官を10代に渡り務め上げた。陣屋跡は街道添いの山腹に広大な敷地を持ち、美しく切りそろえられた石垣が残る。明治〜昭和初期頃まで建物が残っていたようだが現在は失われ、石垣や庭園跡、井戸跡などが残る。私有地で長年 立入禁止だったが、近年 春と秋に内部公開されている。

<基本データ>
●名称:多羅尾陣屋 (多羅尾代官陣屋)
●所在:滋賀県甲賀市 (地図)
●城主:多羅尾光太
●築城:慶長五年(1600)
●遺構:石垣、井戸、庭園跡

訪問時期:2016年10月


<訪問記>

tarao_jinya-01-8004信楽高原鐵道 終着駅「信楽駅」から更に南西へ。京都府・三重県との境目に近い「多羅尾地区」に陣屋跡は残る。こちらがその陣屋跡入口。正面に駐車場あり。

tarao_jinya-02-7973多羅尾陣屋跡 入口となる表門跡。かつては私有地のため立入禁止だったが、近年 整備がされ春季・秋季に一般公開されるようになった。

tarao_jinya-03-7900入ってすぐのポストに案内パンフレットが入っている。ありがたく一部頂いていこう。

tarao_jinya-04-8329こちらが案内パンフレット「天空の郷 多羅尾ガイドブック」。A4フルカラー8ページ。すばらしい。伝えたい歴史があります!

tarao_jinya-05-7899では陣屋跡内へ。左右に低い石垣が見える。かつては、この上には漆喰塀が設置されていたのだろう。

tarao_jinya-06-7901左側の低い石垣。粗めだが、長方形に加工された石材が目地を併せて積み上げられている。布積みと言われる積み方。奥に大きなパネルが見える。

tarao_jinya-07-7902説明パネル「市史跡多羅尾代官陣屋跡の古写真」。明治30年代頃に撮影された写真で、オリジナルは勿論白黒でデジタル彩色だがかなり迫力がある。左奥の焦げ茶色の馬の前に居る帽子をかぶった人物が、なんと最後の代官だった多羅尾光弼氏とのこと。左右の石垣の上には漆喰塀があり、正面の石段の奥には番所と思われる建物も見える。奥の山はややハゲ山だ。とても貴重な写真。

tarao_jinya-08-7970上の写真とほぼ同じ角度から撮影した現況。正面の坂道、奥の水平の石垣などはそのまま残っている。右側の石垣の形(角の石が歪んでいるところなど)が写真と全く同じだ!逆に左側の石垣は上のほうが失われていることも分かる。

tarao_jinya-09-7906坂道へ。奥の切込ハギの美しく整えられた石垣の上に、かつて番所があった。

tarao_jinya-10-7953坂道の向かって右側の石垣。隅部は算木積みでガッチリ固めてある。中央部は落し積みという江戸後期以降の技法で積まれている。一段上の石垣は内部が膨らんできていて危ない状況だ。

tarao_jinya-11-7959番所台の石垣と大手坂道。正面右前の石垣の上には立派な門が建っていたのだろうか。

tarao_jinya-12-7960しかし古写真には明治30年頃まで漆喰塀や建物がバッチリ残っていたのに、なぜすべて失われて(破壊して)しまったのだろうか。

tarao_jinya-12a-35-7946番所の下あたりから。番所下の石垣は陣屋内で最も美しく切りそろえられはめ込まれた石垣。4000石とはいえ、家康公を助けた功績で陣屋構築時に大きな財政支援が幕府よりあったのだろう。

tarao_jinya-13-7907では坂道を上がって上段へ。陣屋跡は、今いる下段部と、この上の上段部の二段構成になっている。

tarao_jinya-14-7908多羅尾陣屋 上段部へ。左奥に見える建物は近年のもの(無人の模様)。

tarao_jinya-15-7909上段に設置されていた巨大パネル「市史跡多羅尾代官陣屋跡の古写真」その2。先ほど上がってきた坂道の下から撮った写真のようだ。大正から昭和初期とのことで、明治30年の写真に見られた建物などはすべて失われて石垣以外は更地になっており、面影が全く無い。明治末期に何があったのだろうか。坂の上には瓦葺きの式台(玄関部)を持つ巨大な茅葺きの建物が見える。左奥にも瓦屋根が見える。おそらくこれが19世紀中頃(江戸後期)に建てられた代官陣屋の主屋だろうと考えられている。しかしそれも今はもう失われてしまった。

tarao_jinya-16-7910多羅尾代官陣屋跡 巨大説明板。歴史と陣屋跡の現況に関する説明、図面がある。左下の写真は先ほどの巨大パネルの彩色前の白黒版だ。

tarao_jinya-18-7911多羅尾代官陣屋跡 平面図。坂道の上は表庭園、そして主屋があり、其の奥には伝代官蔵と北庭園があるようだ。更に斜面下には裏口も見える。

tarao_jinya-18a-30-7938こちらは表庭園前の、かつての代官陣屋 主屋があったと思われる場所。そのまま、住民の家が建っている。コンクリートの基礎が見える。陣屋の痕跡は失われてしまったのだろうか。

tarao_jinya-18b-31-7937かつて式台(玄関部)があった場所に、玄関で使われていた巨大な石台などが残されていた。細長い石材に囲まれた四角い部分を覗いてみよう。

tarao_jinya-18c-32-7934こちらの石枠の中には甕(かめ)が2つ埋められていた(奥は埋まっている)。パンフによると、ここはちょうど玄関の床下にあたり、この甕は能舞台でよく見られる音響用の設備だったとか。この上を歩くといい音がしたのだろうか。

tarao_jinya-19-7912では建物の脇から上段奥へ行ってみよう。

tarao_jinya-20-7913上段奥に建っている建物。漆喰の壁を持つ土蔵だ。パンフには伝代官蔵と書かれている。

tarao_jinya-21-7929蔵の裏側へ。漆喰が剥がれ落ちているが、それでも傾くこと無く威厳高く建っている。地面は高めの礎石の上に載っている。

tarao_jinya-22-7926陣屋上段の裏側は大きな斜面になっていた。山腹を削平して上段を造成したのだろうか。

tarao_jinya-23-7928上段にあった、土塁状の場所と、そこに残る瓦。建物を破却したときの瓦片を積み上げていた場所?

tarao_jinya-24-7925上段奥は北庭園跡。かなり枯葉と土に埋もれているが、庭園があったことはよく分かる印象。整備をすればかつての庭園の姿が現れるかもしれない。

tarao_jinya-25-7923調査の結果、かつては水を湛えていたという北庭園の池。石積みと、石橋が残る。

tarao_jinya-26-7922複雑な形をした池や島。回遊式池泉庭園。

tarao_jinya-27-7915北庭園の奥には社跡が残る。その手前には石積みの土台。

tarao_jinya-28-7919北庭園奥の社跡。

tarao_jinya-29-7931陣屋内に残る井戸。こちらは上段。蓋がしてあって中は見えない。

tarao_jinya-33-7945こちらは下段の井戸跡。巨大な石で囲ってあり今も水を湛えている。

tarao_jinya-34-7944下段井戸跡。水が綺麗!

tarao_jinya-36-7974では表門から一旦外へ出て、外周の濠沿いに北へ進み、裏門方面へ行ってみよう。

tarao_jinya-37-8002陣屋外周。今は草ぼうぼうの斜面だが、当時はこの上に土塀や石垣が並び、斜面もキレイに整備され土が露出した状態だったのだろう。

tarao_jinya-38-7977カーブに沿って奥へ。代官陣屋は英語では色々な表現方法があると思うが、”行政長官” や “判事” を意味する magistrateを使い Magistrate’s Office と訳していた。スペルミスはご愛嬌。

tarao_jinya-39-7981やがて左側に大きな石垣がある場所へ。ここが裏門にあたる。表門付近の切りそろえられた美しい石垣とは趣が異なる。

tarao_jinya-40-7998それほど美しく加工はされていないが、それでもほぼ同じ大きさ・形に切りそろえられ積み上げられている裏門石垣。

tarao_jinya-41-7993裏門から奥へ。上段へ通じる道は立入禁止だったので、下から陣屋上段を見上げてみる。左奥に見える赤い看板が立入禁止場所。

tarao_jinya-42-7991立入禁止だった裏門奥から上段へと通じる坂道沿いに残っていた石垣。下からズームで。

tarao_jinya-43-7986裏門奥あたりを散策してみると草に埋もれているが、切込ハギの石垣の土台があった。かつての重臣の屋敷跡か何かだろうか。

信楽代官の屋敷があった多羅尾陣屋跡。現在は市史跡として整備も進み、春と秋に期間限定で公開されている。甲賀・伊賀のお城巡りのお供に。

訪問時期:2016年10月
撮影機器:FUJIFILM X-T10 + XF14mm
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